9/1(日) 午後4:00-午後5:13
あの日、東北沖であれほど巨大な地震と津波が起きることを想定できなかった科学者たち。深い悔恨と新たな決意を胸に、次こそは危機を事前に社会に伝えたいと、再び挑んできた。この10年で飛躍的に進歩した人工知能やスーパーコンピューター、宇宙からの観測などを駆使。巨大地震の「前触れ」をとらえ、「地震発生確率が高まっている地域」をあぶりだし、命を守ろうとする最前線を、宮城県出身の鈴木京香さんとともに見つめる。
目次
テーマ
巨大地震の予測は依然として困難だが、AIや新技術を用いた研究が進んでいる。同時に、個人レベルでの防災対策の重要性が強調されている。科学的知見と個人の備えの両方が、地震災害への対応に不可欠である。
要点
- 南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率は70%から80%と高く、最大で死者32万人の被害が想定されている。
- GPSデータを用いた新しい手法により、内陸部を含む地震が起こりやすい場所の予測が試みられている。
- AIとスーパーコンピューターを用いた新たな津波予測システムが開発された。
- 空気の力で建物を浮かせる技術やAIを使った揺れ制御システムなど、新しい地震対策技術が開発されている。
- 低コスト耐震化や防災小説など、個人レベルでの防災対策も進んでいる。
- 地震を巨大化させる可能性のあるスメクタイトという物質の存在が発見された。
- 想定外の事態に備えるためには、科学的知見と個人の想像力・行動力の両方が重要である。
ハイライト
"科学や技術が進んだ現代もなお、悲劇は繰り返されています。"-- 《講義の冒頭部分》
"明日起こるかもしれないから逃げておこうではなくて。可能性が高いんだから、備えをしっかりする、ということに繋げていただけたら。"-- 堀隆 《インタビュー》
"ある意味、長期予測的なことですか。成功した例とも言えるかもしれません。"-- 西村拓哉 《インタビュー》
"色が薄くなっているようなところでも、確率はゼロではありません。これは相対的なものですので、赤くなっているようなところでは、より注意しなきゃいけないというふうに見ていただきたいと思います。色が薄いところは安心だというふうに見てはいけないと思います。"-- 西村拓哉 《講義内容》
"巨大地震は滅多に起きませんから、電磁相の異変が本当に前触れなのかを科学的に解明するためには、もっとたくさんの観測データが必要です。まだ分からないことはありますが、それでも研究の価値はあります。科学者がやるべき仕事だと思っています。"-- 《講義内容》
"より科学的な合理性が高い予測ができるという意味で、防災等に役に立つのではないかというのを期待しているところです。"-- 《講義内容》
"犠牲者ゼロという目標になります。"-- 今村文彦
"自然現象においても100%同じことは起こらないですよね。本当に正しいということは実はなかなかわからないです。その中で判断をしていく。"-- 今村文彦
章とトピック
- 巨大地震の歴史と予測約1600年前の地中海の地震から東日本大震災まで、巨大地震は繰り返し人類を襲っている。科学技術の進歩にもかかわらず、予測は困難を極めている。南海トラフ巨大地震の発生確率は今後30年以内に70%から80%と高く、最大で死者32万人の被害が想定されている。
- 1600年前の地中海の地震で3人の親子が命を落とした遺跡が発見された。
- 2010年1月の番組で、東北沖でもマグニチュード8クラスの巨大地震が起きる可能性があることを伝えた。
- 東日本大震災から10年が経過し、科学者たちは新たな観測技術やAIを用いて地震予測に挑んでいる。
- 南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率は70%から80%と公表されている。
- 南海トラフ巨大地震の予測と研究和歌山県三浜町で8500万年前の地震の痕跡が発見され、南海トラフでの地震の巨大化を予測する重要な鍵となっている。プレート境界での特殊な現象により、地震のズレ動きが最大50メートルに達する可能性がある。スーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、スロースリップが巨大地震の前触れとなる可能性が示唆されている。
- 和歌山県三浜町で8500万年前の地震の痕跡が発見された。
- プレート境界での強烈な摩擦熱により、地震のズレ動きが巨大化する可能性がある。
- スーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、スロースリップが巨大地震の前触れとなる可能性が示された。
- 南海トラフ地震臨時情報という新たな仕組みが2019年に立ち上げられた。
- 内陸部の地震予測内陸部でも予期せぬ大地震が発生しており、既知の活断層以外でも地震が起こる可能性がある。GPSデータを用いた新しい手法により、地震が起こりやすい場所の予測が試みられている。西日本のプレートが複数のブロックに分かれて異なる動きをしている可能性が示唆されている。
- 内陸部でも活断層の存在が知られていない場所で大地震が発生している。
- GPSデータを用いた新しい手法により、地震が起こりやすい場所の予測が試みられている。
- 西日本のプレートが複数のブロックに分かれて異なる動きをしている可能性が示唆されている。
- 西日本の地震予測京都大学の西村拓哉氏が作成した西日本の直下型地震発生確率の予測地図によると、北陸や岐阜県平田地方、大阪や兵庫周辺、九州北部の大分県、九州南部の鹿児島・宮崎周辺で地震発生確率が高くなっています。九州南部一帯では今後30年以内に大地震が起きる確率が31%から42%と、政府の地震調査委員会の予測の2倍以上となっています。
- 西村氏はGPSデータを分析し、西日本一帯のひずみの蓄積を計算して地震の起こりやすさを予測しました。
- 予測地図では、色が赤くなるほどマグニチュード6.8以上の大地震の発生確率が高くなっています。
- 活断層が確認されていない地域でも、GPSデータによる分析で地震発生確率が高くなっている場所があります。
- AIと人工衛星を用いた地震予測カナダでは、AIを使って地震発生前のわずかな兆候を見つけ出す研究が進められています。一方、中国は人工衛星を打ち上げ、電離層の電子密度の変化から巨大地震の前触れを捉えようとしています。これらの新技術は地震予測の可能性を示していますが、まだ確実な予測は困難であり、さらなる研究と検証が必要です。
- カナダでは、AIを使って岩盤の微弱な振動(ノイズ)から地震発生を予測する実験が行われています。
- 中国は人工衛星を使って電離層の電子密度の変化を観測し、巨大地震の前触れを捉えようとしています。
- これらの新技術は興味深い結果を示していますが、まだデータが少なく、慎重な検証が必要です。
- 地震対策の最新技術激しい揺れから建物を守る新技術として、空気の力で建物を浮かせる方法やAIを使った揺れ制御システム、デジタルツインを用いた詳細な地震シミュレーションなどが開発されています。これらの技術は、従来の対策では対応できなかった課題に対処し、より効果的な地震対策を可能にすることが期待されています。
- 空気の力で建物を浮かせる技術が実際の地震で効果を発揮しました。
- AIを使った重りの制御システムにより、橋の揺れを1分の1に抑えることに成功しています。
- デジタルツインを用いて、都市全体の詳細な地震シミュレーションが可能になりつつあります。
- 地震と津波の予測と対策地震と津波の予測技術が進歩し、AIとスーパーコンピューターを用いた新たな津波予測システムが開発された。また、低コスト耐震化や防災小説など、個人レベルでの防災対策も進んでいる。しかし、想定外の事態に備えるためには、科学的知見と個人の想像力・行動力の両方が重要である。
- 関東地方では地震の揺れが増幅されやすい地域が多い
- 高知県では低コスト耐震化の取り組みが行われており、自己負担10万円未満で耐震化が可能
- AIとスーパーコンピューターを用いた新しい津波予測システムが開発された
- スマートフォンアプリを用いて個人の位置に応じた津波情報を提供する技術が開発中
- 防災小説という取り組みで、具体的な避難行動を想像し書くことで当事者意識を高める
- 地震を巨大化させる可能性のあるスメクタイトという物質の存在が発見された
まとめ
- 巨大地震の予測は困難だが、常に備えを怠らないことが重要である。
- スロースリップなどの異変を常に監視し、前触れを見逃さないようにすることが重要である。
- 既知の活断層以外でも地震が起こる可能性があることを認識し、広範囲で備えを行う必要がある。
- 地震発生の可能性が高い地域では、建物の耐震化や家具の固定など、より積極的な防災対策を進めるべきです。
- 地震予測に関する情報に接する際は、その根拠や客観的な検証の有無を考慮しながら判断することが重要です。
- 新しい地震対策技術の研究開発を継続し、実用化を進めることで、より効果的な防災対策を実現することが重要です。
- 過去の経験だけでなく、変化する環境や条件を考慮に入れた防災対策が必要
- 科学的知見を理解しつつ、個人レベルでの備えと行動が重要
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